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2026 研究成果発表会「ふじのくに山城セミナー」の報告

基調講演をする松下善和氏

基調講演をする松下善和氏

副会長・平井登の研究成果発表

副会長・平井登の研究成果発表

理事・繁田禎典のオンライン発表

理事・繁田禎典のオンライン発表

会員・鈴木晃太朗の研究成果発表

会員・鈴木晃太朗の研究成果発表

 
 去る7月19日(日)、本会の研究成果発表会「第31回ふじのくに山城セミナー」を静岡市清水区島崎町の東部勤労者福祉センター(清水テルサ)で開催しました。牧之原市教育委員会社会教育課文化財調査官の松下善和さんに「勝間田城址550年大祭に向けて」をテーマに基調講演していただいたほか、副会長の平井登さん、理事の繁田禎典さん、会員の鈴木晃太朗さんが研究成果を発表し、会員や一般参加者など合わせて約50人が耳を傾けました。最後に名誉会長の水野茂さんが講評。発表の評価とともに、会の宿願となっている『静岡県の城跡―中世城郭縄張図集成―』(東部・伊豆国版)の発刊に向けて調査研究を推進するように激励を受けました。

❶松下さんは勝間田城(牧之原市勝田)の歴史や遺構、周辺の遺跡に加え「持続可能な歴史と自然の調和」および「御城印と地域の絆づくり」について話しました。
 静岡県指定史跡の勝間田城は、在地領主の勝間田氏が15世紀中ごろに築城したと考えられ、戦国時代以前の原型を残した貴重な山城となっています。特徴的な遺構として、本曲輪の東側に尾根を断ち切る堀切が5条連続で刻まれています。勝間田氏は応仁の乱以降に駿河守護今川氏と対立。勝間田城は文明8年(1476)に攻め落とされ、今年で落城550年になります。現在は毎年4月に当会会長の望月保宏さんと会員の小城小次郎さんを案内人として招く見学会を、11月に勝間田城址祭を開催しており、今年は11月8日(日)に550年大祭などを開催する予定になっています。
 講演の中で「持続可能な歴史と自然の調和」について、戦国時代の森林環境を取り戻す活動と子供への森林環境学習の様子を紹介しました。「御城印と地域の絆づくり」は、興味を持って城に関われる若者を掘り起こす目的。榛原高校書道部の協力で御城印を作成し、書道パフォーマンスを実施していることを紹介しました。売上はパンフレットの作成などに活用しており、勝間田城を盛り上げる相乗効果になることを期待しています。ガンダムUCをモデルに七色に輝く御城印も作成して静岡ホビーショーに出展。今後も地元と市外の次世代の参加を呼び込む方法を探していくそうです。
 まとめとして「森林整備・御城印という新たな視点で地域の誇り・歴史・観光価値を地域住民が認識できるようになりました。今後も多世代の協力を得て持続可能な活動を継続していきます」と話しました。

❷平井さんは「油山寺は寺院城郭か―地形・遺構・文献からその可能性を探る―」をテーマに調査成果を発表。『家忠日記増補追加』に記された、幻の「鼻欠淵要害」について報告しました。詳しい内容は、本ウェブサイトの「調査ノート」に掲載しており、セミナー当日に配布した資料も閲覧・ダウンロードできますので参照ください。

❸繁田さんは赴任中のインドからオンラインで発表しました。テーマは「新発見の都殿(みやけど)の城郭遺構」。縄張図集成(東部・伊豆国版)の発刊に向けて、今年南伊豆町で5カ所を調査して都殿砦(下賀茂)を含む2カ所の遺構を確認したことを報告しました。
 加納矢崎城背後の尾根を上り詰めたピークと北西側の鞍部は、かつて当会の会員が発見した遺構で、改めて調査したところ堀切状の遺構が2条あるのを確認しました。
 小字名から都殿砦と命名した遺構は、曲輪と畑もしくは自然地形と思われる平場があり、曲輪の南北に堀切が穿たれており、南側は二重堀切になっていることを赤色立体図や縄張図、現地の写真を示しながら紹介しました。
 考察では「二重堀切であることを前提にすると早雲の伊豆侵攻に伴うものとは考えにくい」として二つの可能性を指摘しました。一つは「清水氏が弓ヶ浜と青野川の監視中継点として整備した」もしくは「小田原攻めに備えて築城したが放棄して下田城に籠もった」という説が考えられることを説明しました。もう一つは豊臣氏の築城または改修を挙げました。下田城攻めの時点で清水氏は領地を放棄して雲見の高橋氏と共に下田城に入ります。豊臣方の上陸部隊が松崎方面から進撃してきており、「補給路を確保するために築城もしくは改修した」という説が考えられるといいます。
 当会にとってオンラインを使用した発表は初めての試みでしたが、危機的トラブルは一切なくスムーズに終えることができました。発表の内容はセミナー当日に発刊した機関誌『古城』69号に調査レポートとして掲載しているのでご覧ください。

❸鈴木さんのテーマは「三次元地形データによる城館遺構の新発見とその意義―伊豆半島の事例からみた分布の再検討―」。地形データの分析で新たに確認した伊豆市松ヶ瀬および伊東市新井の城館類似遺構の調査成果を基に、地形データの判読が伊豆半島の地域像および歴史像をどのように更新し得るのかを展望し、その研究上の意義と今後の課題を論じました。
 三次元地形データの普及によって城郭研究の進め方が大きく変わっている点に着目。現地に向かう前に広域の地形を俯瞰し、客観的な条件で調査対象を把握できるようになり、効率化だけでなく精度や再現性を高め、これまでに見落とされてきた遺構を発見する可能性があることを強調しました。
 今後の展望については、「文化財保護や普及活動に大きく貢献できる技術」として、一つ一つの遺構を詳しく調べるだけでなく、それらを結びつけて地域の歴史を復原する点において、三次元地形データの点と点を結び、面として地形を理解するための共通基盤となるとから「今後の城館研究に欠かすことのできない存在になっていく」と説明しました。その上で「現地踏査、文献資料、考古資料、三次元地形データのそれぞれの長所を活かしながら、多角的な視点で地域史の解明を進めていきたいと考えています」とまとめました。さらに、「新たな遺構の発見だけでなく、既知の城館についても構造や機能の再評価が進むことも期待される」としました。
(報告者:金剌信行)
 

最終更新日:2026-09-08