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第277回見学会「越前朝倉氏の山城」報告

令和5年度最後の事業となる一泊二日見学会は、福井県福井市にある朝倉氏関係の城郭探訪を実施しました。

 

第277回見学会「越前朝倉氏の山城」報告 【一日目】一乗谷城

一乗谷城遠望

一乗谷城遠望

宿直曲輪での集合写真

宿直曲輪での集合写真

観音屋敷跡の土塁

観音屋敷跡の土塁

忽谷石製の不動明王

忽谷石製の不動明王

 
 令和6年(2024)5月11日(土)から12日(日)にかけて、「第277回見学会 越前朝倉氏の山城」を開催致しました。当日の参加者は総勢21名(途中乗車、現地集合者を含む)、JR静岡駅北口に集合し、バスにて7時30分出発。東名高速道路を一路西へ。途中小笠PAで3名乗車、その後名神高速道路、北陸自動車道を経由し福井市方面へ向かいました。昼食はバスの中で済ませ、12時40分頃一乗谷朝倉氏遺跡馬出ルート登り口付近に到着、現地集合者2名と合流し登城を開始しました。この日は朝から晴天で5月とは思えないほど気温も上昇し、水分補給をしながらの登城となりました。
 一乗谷城は越前国最大級の巨大山城で城下町の谷を構成する東側の丘陵標高約473メートルに築かれた戦国期の大名朝倉氏の本城であり、周辺には支城の役割を思わせる多数の城館跡遺構や伝承地が残っています。今回は、山城関連遺構が点在する大手道と伝わる馬出ルートから登城しました。暫く進むと右手に巨大な堀切を見ることができます。ここは小見放城と言われ大手を監視する城であると考えられます。さらに進むと笏谷石製の線刻磨崖仏や不動明王が出迎えてくれました。
約1時間の登山の後、建物跡を思わせる礎石の残骸が残る千畳敷跡、観音屋敷跡、赤淵神社跡、宿直跡など広い平坦地や一部土塁なども確認し、尾根上に上がって最大の特徴である畝状空堀群に参加者は感嘆の声をあげていました。
 続いて、一の丸、二の丸、三の丸と曲輪間の堀切や畝状空堀群を存分に堪能し、少し戻って、英林塚ルートから大きな岩の間をくぐりぬけながらの下山となりました。静岡県の山城とは違う特徴を持つ縄張りにそれぞれ活発な意見交換などが行われ、楽しく過ごすことができたと思います。その後、福井駅前のホテルに入り一休みした後、駅前の割烹で夕食を兼ねての懇親会も大いに盛り上がりました。
(報告者:稲垣雅一)
 

第277回見学会「越前朝倉氏の山城」報告 【二日目】成願寺城・戌山城

成願寺城主郭付近の堀切と土塁

成願寺城主郭付近の堀切と土塁

成願寺城での集合写真

成願寺城での集合写真

戌山城の畝状空堀

戌山城の畝状空堀

戌山城の大堀切

戌山城の大堀切

 
 2日目は8時15分宿泊先ホテルを出発し、一乗谷城の下城戸側を守る支城の一つと位置付けられる成願寺城へ向かいました。成願寺城の遺構は尾根上に集中する古墳群と重なり遺構の東側直下にはかつて波着寺が存在したといわれています。中腹の観音堂跡まではしっかりとした登山道があり、観音堂跡、本堂跡など平坦地が残っています。
その後、寺院跡を抜けて城域に入りました。城は尾根上の古墳間を利用して堀切としているため主郭と思われる曲輪には大きな堀切が確認できますが、城郭遺構と古墳の区別が難しいと感じました。また、一乗谷城の特徴であった畝状空堀群が殆ど見られず、会員の意見や見解もかなり分かれていました。城跡は未整備のため樹木をかき分けながら道のない斜面を進み苦労の連続でした。
 下山後は、一昨年リニューアルされた一乗谷朝倉氏遺跡博物館を訪れ常設展、特別展を見学、解りやすい展示に最新の技術の進歩を感じるものでした。
 お昼頃、博物館をあとにして、大野市にある戌山城へ向かいました、雨が降りだしてきたため昼食は車中で済ませ雨具を準備し階段やロープも設置された登城路を登りました。
この戌山城で特徴的なのは堀切の規模が大きいことです。巨大な堀切が続き、しっかりした畝状空堀群も随所に設けられており、大いに見応えがありました。しかし、畝状空堀群を全く使用せず横堀を設けている曲輪もあり、一つの城の中に縄張りの大きな違いを感じるものでした。また、ここにはすぐ近くの越前大野城をはっきり見ることができる展望台があり、「天空の城」を撮影できる人気のフォトスポットとなっています。
今回は、一乗谷城、成願寺城、戌山城と3城を見学し静岡県内の中世城郭とは違った縄張りや独特の造りを十分に堪能でき、2日目のお昼頃から少し天気がくずれましたが、事故もなく楽しみながらの大変有意義な見学会となりました。
(報告者:稲垣雅一)

最終更新日:2024-05-15