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のろし第333号 ミニ見学会「今川氏親の遠江侵攻」(9月15日開催)ご案内

 温暖化の影響で暦の上では仲秋にあたる9月中旬になっても「熱中症警戒アラート」が発表されるような気候となり、山城探訪に中々気が進まない昨今になっています。そのようなことから本会では、9月の事業として、若手会員を中心とした研究成果発表会や、誰でも気軽に参加できるミニ見学会を行うなどして、交流機会の創出に努めていますが、本年度は昨年度に続き、静岡県内のJR主要駅から比較的アクセスのよい山城をピックアップしたミニ見学会を開催することにいたしました。


■実施日:令和6年9月15日 (日)  
※雨天等により中止・延期の場合、前日18:00にホームページでお知らせします
■見学先:掛川市内の山城(美人ヶ谷城・滝ノ谷城・松葉城) 脚力レベル★★★☆☆(3)
■参加費:会員3,000円/一般4,000円
■乗り物:古城研究会・市沢さんのバス
■集合場所:JR掛川駅北口・ロータリー
■身支度:山歩きに適した服装(帽子、長袖、長ズボン、トレッキングシューズ、雨具)、弁当飲物類
■担 当:望月保宏会長、望月徹事務局長
■締切日:9月12日(木) ※定員25名になり次第締め切りますのでお早めにお申し込みください
■申込先:s-kojouken@outlook.com 
■日 程:9:30 JR掛川駅北口出発 → 10:00〜11:00 美人ヶ谷城→11:15〜12:30 滝ノ谷城(昼食)→12:40 〜13:00 新東名掛川PA(下り)トイレ休憩→13:30〜14:30 松葉城→15:30 JR掛川駅(解散)


●美人ヶ谷城(掛川市上西郷字美人ヶ谷)
 城に関する文献資料は無いが、城跡周辺を地元では「シロノダン(シローダン)」と呼んでいる。また山麓には「殿垣戸(トノガイト)」、「保戸垣戸(ホトガイト)」、「旗垣戸」、「太鼓櫓」と呼ばれる地名が残っており、江戸時代に編纂された『掛川誌稿』では「殿垣戸」と云所は石谷氏の宅趾とも云う……、山頂を櫓の趾といひ……」と記され、石谷氏の居館跡と伝えられている。
 倉真川とその支流である滝ノ谷川の合流点から北方へ600mの、南へ延びる尾根上の東西約100m、南北約250mの範囲に築かれた連郭式の山城である。同城の縄張構造及びその規模から、室町〜戦国前期の今川氏親による遠江侵攻時の地域の混乱に際し、遠江西郷氏または石谷氏と推定される在地の豪族によって築かれた可能性が高いが、後世に改修を受けた可能性も否定できない。
なお、地名の「美人ヶ谷」とは、『掛川誌稿』によれば、山の禿げた状態を称する「ビンゼ谷」が転訛したものであると記されている。

●滝ノ谷城(掛川市上西郷)
 史料がないため、確かな城史は不明である。江戸時代後期の地誌・『遠江国風土記伝』や『掛川誌稿』などにも記述が無い。ただ、「ジョウヤマ」の地名が残され、城跡であるとの伝承はあったようである。南の美人ヶ谷城とは800mほどの距離にあり、城の西直下を峠を越えて原谷川流域の孕石方面に抜ける道(現・県道39号線)が通り、交通の要衝であるなど立地は類似するが、構造が大きく異なり、築城または改修の時期、もしくは築城者・築城目的が相違する可能性も指摘される。現存する遺構から考察すると、切岸の高さや虎口の状況は高度な技術を要し、近くに集落も無いことから、村や土豪の城とは考えにくく、「石ヶ谷氏(西郷氏)の城」よりも大規模な勢力による組織的な軍事行動の中で作られたものと推測される。
 
●松葉城(掛川市倉真字松葉・城山)
 佐野郡山口郷であった掛川市倉真字松葉に本拠を置く川井蔵人成信の居城松葉城は、島田市横岡にある志戸呂城から、大代、粟ヶ岳北麓を経て掛川へ至る山間地ルート上に位置している。現在は北側に新東名が通る。存在する倉真川南岸の丘陵上は東西500mと広大であるが、極めて痩せ尾根地形のため小規模な連郭式山城である。
 明応二年(1493)四月に勃発した、管領細川政元のクーデターと言われる「明応の政変」。細川氏に呼応した伊勢新九郎盛時(宗瑞)は堀越御所に足利茶々丸を攻めるも取り逃がしてしまう。
 翌明応三年八月、宗瑞は茶々丸を支援する遠江守護斯波義寛配下の原氏など国人衆を牽制するために遠江三郡に攻め込む。明応五年に入りそれを好機とみた今川氏親は遠江へ侵攻し、『円通松堂禅師語録』では九月に佐野郡山口郷(掛川市東部)を支配する松葉城主の川井(河井)蔵人成信が戦死したと伝えている。『掛川誌稿』では、島田市横岡の志戸呂城主鶴見播磨守が「明応五年九月十日、佐野郡倉真村松葉ノ城ヲ襲テ、城主河井蔵人成信カ為ニ討ル」とあり、今川軍侵攻に混乱した国人衆の争乱の中で討たれた事を伝えている。

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最終更新日:2024-08-25